
これまで、寝具や家電といった「外側の環境」、そして食事という「内側の環境」を整える知恵についてお話ししてきました。第3章の締めくくりとなる今回は、それらの点と点をすべて結びつけ、私たちの日常生活の中にどうやって落とし込んでいくかという「習慣のデザイン」がテーマです。
仕事に、プライベートに、毎日を忙しく駆け抜ける大人だからこそ、体調の波に振り回されてから慌てるのではなく、あらかじめ「平穏な24時間」を自分の手で組み立てておくことが最大の防御になります。
医療行為ではないので「これをすれば100%発作が起きない」という魔法ではありませんが、40年の経験の中で私がたどり着いた、毎日のコンディションを高いレベルで安定させるための3つの生活習慣を共有します。
1.朝:目覚めの5分で「今日の防衛ライン」を確認する
私の1日は、根性や気合で起きるのではなく、冷徹に「自分の状態をチェックする」ことから始まります。
朝起きたら、まずは前夜にセットしておいた温湿度計を確認し、部屋の乾燥状態をチェックします。さらに、スマホの気圧予報アプリを開いて「今日の午後は気圧が下がるな」といった天候の波をあらかじめ頭に入れておきます。
これだけで、「よし、今日は少し気管支がデリケートになりやすい日だから、仕事のペースを7割に抑えて、夜の会食は早めに切り上げよう」といった、その日の防衛戦略を朝のうちに組み立てることができます。自分の状態を先回りして知っておくこと。これが、平穏な1日をデザインする最初のステップです。
2.昼:オフィスや移動中は「こまめな水分補給」をルーティンにする
日中、仕事に熱中しているとついつい見落としがちなのが「喉の乾燥」です。特にエアコンの効いたオフィスや乗り物の中は、想像以上に空気がカラカラに乾いています。
喉や気道の粘膜が乾いてしまうと、空気中のわずかなホコリや冷気に対しても、過剰にムズムズと反応しやすくなってしまいます。
そのため私は、デスクの上やカバンの中に必ずマイボトルを常備し、「喉が渇いた」と感じる前に、15分〜30分おきに「一口ずつ水を口に含む」ことを習慣にしています。一気にたくさん飲む必要はありません。こまめに喉を潤し、常に粘膜を湿らせておくという小さな意識が、日中の平穏を優しく守ってくれます。
3.夜:スマホを置いて「心と体をゆるめる」時間を作る
喘息の症状は、夜中から明け方にかけて顔を出しやすいとお話ししました。だからこそ、布団に入る前の「過ごし方」が、夜の安心感を大きく左右します。
ベッドに入る直前までスマホの画面を見つめて仕事のメールをチェックしたり、激しい情報収集をしたりしていると、脳が興奮して「交感神経」が張り詰めたままになってしまいます。この緊張状態のまま布団に入ると、睡眠の質が落ち、夜中のデリケートな時間帯に体が対応できなくなってしまいます。
私は、寝る1時間前にはスマホをデスクに置き、部屋の照明を少し落として、静かな音楽を聴いたりストレッチをしたりして「心と体を完全にリラックスモード(副交感神経優位)」に切り替えるようにしています。 人生の3分の1を過ごす聖域(布団)へ入る前に、自分の内側のギヤをゆっくりとローに落としてあげる。この儀式があるからこそ、深く心地よい睡眠へと入っていくことができるのです。
まとめ:習慣とは、自分を大切にするための「システム」
お医者さんから処方されている正しいお薬(吸入薬など)を、調子が良くても毎日コツコツと続けることがすべての土台であることは、これまで何度もお伝えしてきた通りです。
その上で、今回ご紹介した「朝のチェック」「昼の水分補給」「夜のディープリラックス」という3つの習慣は、薬の効果を最大限に活かし、自分の体を24時間体制で優しく守るための「システム」だと言えます。
習慣を変えることは、決して自分を厳しく縛ること(規律)ではありません。むしろ、忙しい毎日の中で「自分を徹底的に大切にしてあげるための、優しい仕組みづくり」なのです。
まずは明日、デスクの上に1本の水を用意することから始めてみませんか。あなたの手でデザインした小さな習慣が、きっと毎日の平穏をしっかりと支えてくれますよ。
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