
「もっとこまめに掃除をしていれば、この子は苦しまずに済んだのかな……」 「私の妊娠中の食べ物や、体質を受け継がせてしまったせいかもしれない……」
我が子が「喘息」と診断されたとき、多くの親御さん、特にお母さんは、まるで自分が悪いことをしたかのように激しい罪悪感を抱えてしまいます。 夜中に苦しそうに咳き込む我が子の背中をさすりながら、ごめんね、ごめんねと心の中で涙を流した経験がある方も少なくないはずです。
まず、最初にこれだけは断言させてください。 お子さんが喘息になったのは、決して親御さんの「育て方」や「愛情不足」、「掃除の手抜き」のせいではありません。
今回は、40年近く喘息と付き合ってきた私の視点と、現代医学が明かすアレルギーの本質から、親御さんが抱えるその重い仕切り(罪悪感)をすっきりと解消するためのお話をさせていただきます。
アレルギーは「コップの水」の仕組み
なぜ、同じように暮らしていても、喘息になる子とならない子がいるのでしょうか。それを説明するときによく使われるのが、「アレルギーのコップ」という例えです。
人間は誰しも、生まれつき「アレルギーを受け止めるコップ」を持っています。このコップの大きさ(遺伝的な体質)は人それぞれ異なり、これ自体はお母さんのせいでも誰のせいでもありません。
日々、そのコップの中に、次のような「水(アレルゲン)」が少しずつ注がれていきます。
- ダニ、ハウスダスト
- 花粉、ペットの毛
- 風邪などのウイルス感染、排気ガス
- 急激な寒暖差やストレス
この注がれる水の量がコップのフチを超えて溢れ出たとき、初めて「喘息」や「アトピー」という症状となって体に現れます。
つまり、喘息を発症したのは「生まれ持ったコップの大きさと、現代社会の環境因子がたまたま重なって、水が溢れてしまっただけ」という現象であり、誰か一人の責任では絶対にないのです。
現代の日本は「だれが発症してもおかしくない」環境
「でも、私がもっと完璧に掃除をしていれば防げたのでは?」と思うかもしれません。 しかし、それは不可能です。なぜなら現代の気密性の高い住宅(マンションなど)や、年中快適なエアコン環境は、人間にとって心地よいと同時に、どうしてもダニにとっても繁殖しやすい環境になってしまうからです。
どれだけ毎日必死に掃除機をかけても、家の中のハウスダストを「ゼロ」にすることは医学的にも不可能です。
さらに、現代は昔に比べて大気汚染や黄砂、PM2.5、さらには加工食品の増加など、子どものコップに注がれる「水」の種類が圧倒的に増えています。 つまり、現代の日本において、どの子どものコップがいつ溢れても全く不思議ではないのが現実なのです。親御さんの日々のちょっとしたお掃除の頻度などは、全体のごく一部の要因に過ぎません。
過去を責めるのをやめ、これからの「主導権」を握る
我が子が病気になった原因を過去に探して自分を責めるのは、今日で終わりにしましょう。親御さんが疲弊して笑顔を失ってしまうことこそが、敏感なお子さんにとって一番のストレス(発作の引き金)になってしまうからです。
大切なのは、過去の原因探しではなく、「これから、どうやってコップの水を溢れさせないようにコントロールしていくか」という未来への主導権です。
アレルギーの本質が「コップから水が溢れること」だと分かれば、やるべき対策はとてもシンプルで見えてきます。
- 医師の力を借りて、お薬(吸入ステロイド等)でコップの底を深くしてあげる(炎症を抑える)
- 部屋の寝具対策を徹底して、注がれる水の量(ダニの死骸など)を賢く減らしてあげる
原因は誰のせいでもありませんが、これからの環境を整えて我が子を守ってあげられるのは、間違いなく一番近くにいる親御さんです。それは罪罪感からではなく、「我が子を健やかに育てるための、前向きなマネジメント」なのです。
まとめ:あなたの愛情は、もう十分に届いています
自分を責めてしまうほど悩んでいるということ自体が、あなたがお子さんをどれほど深く愛し、真剣に向き合っているかという、何よりの証拠です。
お子さんは、自分のために一生懸命になってくれる親御さんのことが大好きです。決して、親御さんを責めてなんかいません。
これからは、暗い気持ちで掃除機を握るのではなく、「よし、今日もこの子の気道を快適に保ってあげるぞ」という、前向きな気持ちを持って、環境づくりを楽しんでいきましょう。そのための具体的な「ダニを支配する防具(寝具対策)」の知識は、このサイトの第3章で余すことなくお伝えしていきます。
次章の「夜中に子どもが激しく咳き込んだ時、救急車を呼ぶべき『冷徹な基準』」では、万が一の夜発作の際に、パニックにならずに我が子の命を守るための具体的な見極めラインをお話しします。いざという時のためのお守りとして、ぜひ頭に入れておいてください。
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